~このコーナーでは言葉や文化の違いをテーマとして世界で起こっている興味深いニュース 記事をピックアップしていきます。~
日本の子供は independent?
皆さんは「はじめてのおつかい」という日本のテレビ番組をご存知ですか?もう30年以上も放映されている人気番組ですが、この番組がこの春3月からNetflixで配信されるようになり、海外でちょっとした議論を巻き起こしながらも話題となっているようです。
筆者もそれこそ30年近く前、この番組が始まった当初はよく観ていた記憶があります。小さな子供が近所までおつかいを頼まれ、その道中で起こる様々なアクシデントを乗り越えながらお母さんの待つわが家に帰ってくる姿に思わず涙ぐんでしまったり、また何も頼まれたものを買わずに帰ってくる姿に大笑いしたものです。
そんな日本での人気番組がNetflixでグローバルに配信されることになったわけですが、この(彼らにとって?)奇妙なリアリティ動画が世界各地でどのような受け止め方をされているのか、海外メディアから発信された記事をできるだけご紹介していきたいと思います。まずは、早速わが国でも同じような番組を作ろう!と名乗りを挙げたイギリスはガーディアン紙の記事をご覧ください。
Old Enough: the Japanese TV show that abandons toddlers on public transport
この記事では概ね肯定的に番組を捉えており、イギリス版はじめてのおつかいに乞うご期待、と最後を締めくくっているのが伺えます。
またもう少しシリアスに捉えられたオーストラリアABCの記事がこちらです。最初にこの番組に対する二つの反応が述べられていますが、子どもたちの様子が微笑ましいと捉える肯定派と子どもたちにとって危険すぎるという否定派に分かれています。また、同じことをしようと簡単に考えたらいけません、あなたの子どもを失うことになる、という警告から始まっているところを見ると、”はじめてのおつかい”がいかに海外では色々な意味でインパクトを与えているかが窺い知れます。
How do you know when kids are really Old Enough! for a bit of independence?
こうした海外の記事で共通している最初の反応は「驚き」です。小学校にも行かない小さな子どもを一人で外に出してしまうというシチュエーション自体があり得ないという反応です。「そんな危ないことをさせて大丈夫なの?」という危惧から否定的に捉える向きとなり、子どもをむやみに危険な状況に晒してその様子をTVショウにするなんて考えられない企画、子どもに対する虐待では?とまでエスカレートする意見も中にはありました。実際アメリカで子どもを外にひとりで置いておけば親は逮捕され子どもはすぐに施設に保護されると言いますから、そのような意見が出るのも分からなくはないですね。それほどこの番組自体が日本という国が持つカルチャーと深く関わって存在し得るというわけですが、まさに異文化間コミュニケーションの理解が必要となってきます。
ともあれ地域社会の安全性に対する一定の信頼が確保されている日本では、番組が意図としている子どもたちの悲喜こもごもの奮闘ぶりを純粋に楽しんで見ているわけですが、これはかなり日本ならではということは言えるようです。
心和む番組だと全面的に肯定的に捉えている海外の記事もありましたので下記をご覧ください。
‘Old Enough!’ Is Perfect Comfort TV
また、子どもをひとりでお使いに行かせることから始まって、日本の子どもがひとりで学校に通うことについても多くの関心が寄せられています。これは日本を訪れる外国人が目にする大変驚くべき光景としてよく言われていることですが、このことについて取り上げられた記事をご紹介しておきます。
Why Japanese Kids Can Walk to School Alone
学校には歩いて通うというのが日本では常識と言いますか、歩いて通うことから既に学びが始まっている、そんな感覚はありませんか?これは日本のように人口密度が高く狭い国土で、学校や商店、住宅、工場や事業所などが混然と地域社会にかたまって存在しているという地域コミュニティのあり方にも大きく関係していると思います。簡単に言えば歩いていける範囲で目的が達せられるというわけです。そしてそこには地域コミュニティに対する信頼があってこそ成り立つということが言えるかと思います。広大な土地に住宅地と商業地、工業地と大きく分かれて存在するアメリカやオーストラリアなどの国では物理的に「はじめてのおつかい」は無理であり、だからこそなおさら奇異に映ったのかもしれませんね。
そうした地域コミュニティのあり方という視点から、子どもと地域社会との関係性、自立教育、それらが子どもの成長にどう影響しているかといったことについて日本在住の外国人である母親の視点から実体験に基づいて書かれた記事をご紹介します。
How Japan Built Cities Where You Could Send Your Toddler on an Errand
最後に日本の子どもの自立教育について書かれた記事をご紹介します。日本の子どもが小さな頃から自立させる教育を受けているのか?と問われると私たちは自立心を養う教育は欧米の方が進んでいるのでは、と思っていませんか?赤ん坊の頃から独立した部屋を与えられ学校では自分の考えを持ち意見をはっきり相手に伝える教育が重視され、ディベートなんていう日本人には苦手な分野にも小さい頃からトレーニングされている。筆者だけの勝手な思い込みでしたらご勘弁くださいですが、こうしたイメージがあるので欧米の子どもの方がしっかりしていて大人びたイメージがあるのですが、皆さんはいかがですか?
ところが記事を色々見ていく中で、日本の子どもの”Independece”について書かれた記事が多いことに気づき驚きと共にとても興味深く思いました。学校に歩いて通い、給食は当番制で給仕を行い、教室やトイレ掃除も自分たちで行う。そうした教育が日本の子どもに自立心と責任感、協力し合う意識を持たせるという論調が多く見られました。そこで欧米の子どもに対する教育や接し方とは異なる日本の子どもの自立性の養い方について述べられた記事を最後にご紹介したいと思います。欧米では個をきちんと主張できる自立性、日本では社会の中で調和と責任感を持つ自立性、”自立”というものに対してそんなアプローチの違いがあるように思いました。
How Japan Prepares Its Children for Independence
いかがでしたでしょうか。この番組ひとつで世界中で様々な議論を巻き起こしているのはとても興味深い現象ですね。そして”はじめてのおつかい”が正に日本のカルチャーが色濃く反映された日本ならではの番組であることを改めて知ることとなりました。番組を見る目も今までとは違ったものになりそうです。皆さんはどのような感想を持たれましたか?
では今回のお話はこれで終わりにいたします。