~このコーナーでは言葉や文化の違いをテーマとして世界で起こっている興味深いニュース 記事をピックアップしていきます。~
テレビやYoutubeで日本語を流暢に話す外国人を見かける度にこんなに話せるようになるなんてすごいなぁと感心してしまいます。筆者など何十年も英語と接しているのに、とてもじゃないけど彼らのようにペラペラとはいきません。本当にただ感心するばかりです。
さて、そうは言ってもそこは外国人?笑、どんなに不自由なく会話ができてもやはり外国人の話す日本語であることは否めません。いわゆる外国人訛りがあるからですね。これは母国語のイントネーションがどうしても残ってしまうことから起こる現象と思われますが、例えば強弱アクセントを重視する英語を母国語とする外国人が日本語を話すとき、どこかでストレスを置いたり長めに伸ばして言わずにはいられないのです。「わタァしの国でワァ、、、」というように。
逆を言えばこの英語の強弱アクセントというのが英語を学ぶ日本人にとってなかなか厄介なもので、日本語にはない強弱アクセントから生まれる音節のリズムにまず慣れていません。またその強弱のリズムによって弱となる音が省略されたり次の音とリンクしたりすることで、個々の発音とは全く別の音のかたまりとして聞こえてしまうため聞き取りが本当に難しくなってしまうのです。聞き取りが難しいのですから同じように発話するのはそれ以上に困難です。英語と日本語を比べると両極端とも言えるお互いにとって異次元の言葉と言えそうですが、英語は他にもルーツを同じくする兄弟言語が多く世界の共通言語としての地位を得ているわけですからやはり日本語が特異な言語とも言えるのかもしれませんね。
日本語には母音が5つしかなく子音と合わせても音素の大変少ない言語と言われます。比べて英語は日本語よりはるかに多い音素を持っており、また先に述べたように強弱アクセントによるリズム重視の言語であるため、発音や聞き取りという点で比べると日本人にとって英語のほうがはるかに難しく、これが日本人が英語を苦手とする原因の1つではないかと思いますがいかがでしょうか。またこの英語のように一息で一気にリズムよくある程度まとまった量の文節を発するというのは日本語にはない発声の感覚で、日本語は息の量どころか息を吐かなくても話せてしまう言語とも言えます。肺活量を必要とする英語と必要としない日本語、そんな言い方もできそうです。
音素が多い言語を音素が少ない言語を母国語とする者が聞くと、新しい音を新しい音として認識することが苦手で、その代わりに自分たちの慣れ親しんだ少ない音素のどれかに当てはめようとしてしまいます。RとLの発音の違いは英語圏では全く別の音であるのは当たり前のことですが、日本語では「ラ行」の音にまとめてしまいます。radicalもladderも同じ「ラ」の音というわけです。
逆に音素が豊富な英語圏の人にとっては単純な日本語の発音自体は比較的容易に習得できるようです。加えて英語のような強弱アクセントからくる音の省略や変化がなく一語一語を発音しさえすれば相手に通じやすいのが日本語ともいえます。また主語、動詞、目的語などを必ず要素として必要とし厳格な語順によってそれら要素が管理され意味をなす英語に対し、日本語は「てにをは」の助詞の基本的な使い方やいくつか最低必要な名詞と動詞さえ覚えれば日常の簡単な会話が成立してしまうとも言えます。必ず主語が必要であるとか必ず主語の次に動詞がくるとか、そういうことを気にせず話せてしまうのが日本語なのです。「いい天気。遊びに行く?」という文章でも日常会話では十分通用するので、初級レベルであれば日本語は易しいと言えるのかもしれません。
ある言語が難しいか簡単かは何語を母国語としている話者かで異なるとよく言われますが、こうして見てくると一般的に難しいと言われている日本語も発音に関してはそうでもなく、日本語の難しさ、特に欧米言語話者にとっての難しさは発音以外のところにあるようです。これは漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字と複雑な表記法が加わってくることや、ローコンテクストの英語に対してハイコンテクストの日本語という大きなテーマもありますので、これらについてはまた改めてお話してみたいと思います。
さて、本題に入るまでの前置きが長くなってしまいましたが、こうして日本語の発音は簡単簡単と思っている外国人日本語学習者に日本語の発音を甘くみてはいけないと警鐘を鳴らすある日本在住アメリカ人の方をご紹介したいと思います。
この方はYoutuberでもありここではYoutube名のDogenさんとお呼びすることにしますが、Dogenさんによりますと、日本語を学んでいる外国人の多くが日本語のピッチアクセントに気づいていない、もしくは軽視している、そしてその結果、自分がいわゆる外国人訛りで話してしまっていることに気づいていない、と言っています。日本語のピッチアクセントとは音の高低の違いを言い、英語の強弱アクセントとは異なります。
そこでDogenさんは、もし流暢な日本語、より日本語ネイティブに近づきたいと思うのであれば日本語のピッチアクセントをちゃんと習得すべきだと提唱しているのです。
外国人の方に初めて会って最初の挨拶で「はじめマァして、○○とモゥします。あメェりかから来てサァん年になりマァす。」と言われたら、「日本語お上手ですね」と褒めますが、明らかに外国人の話す日本語だなと思いますよね。どうしても強弱のストレスをどこかに置いてしまうのです。そしてDogenさん曰く、この日本人の「日本語お上手ですね」の褒め言葉が曲者でこれを真に受けて自分が外国人訛りの日本語になっているとに気づかずすっかり自信を持っている外国人が多いのだとか(笑
ということで、日本語がネィティブのように聞こえるかどうかはこのピッチアクセントに大きく関わっているようです。
では、ここでDogenさんによるピッチアクセントについての動画を数ある中からひとつご紹介しますのでご覧になってみてください。
Japanese Pronunciation 101: Pitch-accent! / 日本語の高低アクセントを徹底解説! | Dōgen
また、Dogenさんは日本語を学ぶ外国人コミュ二ティの中でもかなりの有名人のようです。
下記はある日本語学習サイトがDogenさんへインタビューしたときの記事です。
日本語を学ぶ外国人からの視点で日本語を客観的に見ることができ、英語や他の言語を学ぶ私たちにも参考になるかと思います。ご興味ありましたらご覧ください。
“WHAT I USE TO STUDY JAPANESE” – DOGEN
最後に同じく日本語を学ぶアメリカ人youtuberとのコラボ動画もご紹介しておきます。
日本語を学ぶアメリカ人同士によるなかなかの日本語オタクぶりに脱帽です。
Interviewing Matt from Matt vs Japan!
いかがでしたでしょうか。日本語のピッチアクセント、私たち日本人でもどうしてそのようになるのか説明しろと言われても難しいですよね。加えてここに関西、東北、九州と各地のピッチアクセントが存在するのですからまさにワンダーランドな日本語の世界と言えそうですね。
では、今回のお話はこれで終わりにします。