~このコーナーでは言葉や文化の違いをテーマとして世界で起こっている興味深いニュース 記事をピックアップしていきます。~
Mother Gooseの世界 そのなな Tongue Twisters(早口言葉)
さて7回目となったMother Gooseの世界ですが、何かと暗い話題ばかりになりがちな昨今、少しでも楽しいお話ができればとマザーグースで掲載されている「早口言葉」をご紹介したいと思います。
その前に、英米人にとってのマザーグースについて今一度おさらいをしておきましょう。マザーグースは日本のわらべ唄に比べその数と種類の多さで圧倒していますが、その存在価値という点から見ても英米人にとってのマザーグースは子どものころから大人になるまで一生つかず離れずの関係にあり、まさに彼らの血となり肉となっている存在であることが最大の特徴です。
赤ん坊のときには『子守唄』を唄ってもらったり『あやし唄』であやしてもらいその音とリズムが自然と体に吸収されます。幼児期には『遊ばせ唄』で遊んでもらい、もう少し大きくなると『遊戯唄』で友だちと遊ぶようになり、『暗記唄』で競ったり『からかい唄』でふさげ合ったりします。学校では韻や英文法、英詩の勉強で使われ大人になっても小さい頃から慣れ親しんだマザーグースの登場人物の名前や語句がユーモアを交えながら普段の会話で何気なく使われる、といった具合です。
今回ご紹介する『早口言葉』も子どものころの遊びの中で競い合ったり楽しみながら英語の発音とリズムを覚えていったものと思われます。
さて、みなさんは英語の早口言葉で思いつくものはありますか?筆者は”She sells sea -shells on the sea shore”なら聞いたことがあるなぁという程度ですが、みなさんもご存知でしたでしょうか?これもマザーグースからきていたんですね。
では、この”s”連発の早口言葉をまずはご紹介したいと思います。
She sells sea-shells on the sea shore;
The shells that she sells are sea-shells I’m sure.
So if she sells sea-shells on the sea shore,
I’m sure that the shells are sea-shore shells.
英米でもアナウンサーや俳優の方たちがきちんと発音するための舌の訓練で使われたりするようです。日本で言うところの「瓜売りが瓜売りに来て・・・」ですね。
[ʃ]と[s]を正確に使い分けながらリズム良く淀みなく発声するのは至難の業ですが、とてもいい練習になりますので発音が苦手な筆者も挑戦してみたくなりました。
YouTubeでお手本となる動画がありましたのでご覧になってみてください。
;次にご紹介する早口言葉は英語圏ではよく知られている”Peter Piper”です。
Peter Piper picked a peck of pickled pepper;
A peck of pickled pepper Peter Piper picked;
If Peter Piper picked a peck of pickled pepper,
Where’s the peck of pickled pepper Peter Piper picked?
こちらは[p]の音が連発されますが、英米の子どもたちにも大のお気に入り早口言葉だそうです。こちらのほうが”She sells seashells…”よりも発音は易しいかもしれませんね。一息で一行ずつリズムに乗れると結構楽しいものです。慣れてくるとなんだか英語が急に上手になったような気がします(笑
こちらもYouTubeでお手本があります。
最後にご紹介する早口言葉は英語圏で先の”Peter Piper”とともにもっともよく知られている”Betty Botter’s Butter”です。
Betty Botter bought some butter,
But, she said, the butter’s bitter;
If I put it in my batter
It will make my batter bitter,
But a bit of better butter,
That would make my batter better.
So she bought a bit of butter
Better than her bitter butter,
And she put it in her batter
And the batter was not bitter.
So t’was better Betty Botter
Bought a bit of better butter.
日本と英語圏とでの早口言葉の大きな違いはその長さです。この早口言葉でも長いと思いますが、この倍ほどの長さになるものもあるそうです。英語が音とリズムをいかに重視しそれを楽しむ言語であるか、早口言葉の長さからも伺えますね。
さて、こちらもYouTubeでお手本がありますのでご覧になってみてください。“b”の音がリズムを作っている早口言葉ですが、”batt-“と”butt-“の母音の発音の違いもありなかなか厄介です。曲がついていますのでリズムに合わせて楽しく発音練習ができそうですよ。
いかがでしたでしょうか。
英語を理解する3大知識として『聖書』『シェイクスピア』そして『マザーグース』と主張する人もいるほど、マザーグースは英語を知るためになくてなならない存在ですが、非英語話者の私たちにとっては英語の知識だけでなく英語を話す人々の心を知ることができる存在とも言えます。
英語または語学に興味がある方、今まさに語学を習得すべく奮闘中の方、少しでもお役に立てましたら幸いです。
では、今回のお話はこれでおわります。
参考文献:映画の中のマザーグース( 鳥山淳子、スクリーンプレイ出版)、映画で学ぶ英語の世界(鳥山淳子、くろしお出版)、マザーグース・コレクション100(藤野紀男・夏目康子、ミネルヴァ書房)、大人になってから読むマザー・グース(加藤恭子、ジョーン・ハーヴェイ、PHP研究所)、マザーグースをたずねて(鷲津名都江、筑摩書房)、英語で読もうMother Goose(平野敬一、筑摩書房)、ファンタジーの大学(ディーエイチシー)、グリム童話より怖いマザーグースって残酷(藤野紀男、二見書房)、マザーグース1(谷川俊太郎・訳、講談社文庫)、マザーグース案内(藤野紀男、大修館書店)、不思議の国のマザーグース(夏目康子、柏書房)