「世界のニュースから」第14号 ~Mother Gooseの世界 そのさん きらきら星(Twinkle Twinkle Little Star)~

「世界のニュースから」第14号 ~Mother Gooseの世界 そのさん きらきら星(Twinkle Twinkle Little Star)~

~このコーナーでは言葉や文化の違いをテーマとして世界で起こっている興味深いニュース 記事をピックアップしていきます。~

Mother Gooseの世界 そのさん きらきら星(Twinkle Twinkle Little Star)

さて、今回ご紹介のマザーグースの唄は、日本の唄と思ってる方も多いのではないかと思われるほどよく知られている『きらきら星』です。「きらきら光る お空の星よ♪」でお馴染みですね。

18世紀末フランスで流行した唄のメロディが元となっていて、イギリスの詩人ジェーン・ティラーによって”Twinkle Twinkle Little Star”という英語詩に書き換えられマザーグースのひとつとして加えられました。マザーグースの中でも比較的新しく、また作者がはっきりわかっている珍しい唄でもあります。

では皆さんもよくご存知の最初の一節をご紹介します。

Twinkle, twinkle, little star,
How I wonder what you are!
Up above the world so high,
Like a diamond in the sky.
Twinkle, twinkle, little star,
How I wonder what you are!

starとare、highとskyでそれぞれ韻を踏んでいるのがわかりますね。

とても形が整っていてマザーグース特有のナンセンスや不可思議さというものがなく面白みに欠けると思うのは大人の了見?で、世界中の子どもたちに愛され手でお星さまをきらきらさせながら歌ったものですよね。世界で最も有名な英語の四行詩のひとつと言われるほど親しまれています。

ですので日常の何気ない会話、映画やドラマでも頻繁に引用されています。替え歌で登場することも多く、ここでもまたルイス・キャロルによる『不思議の国のアリス』での引用を見てみましょう。

Mad Partyとして有名な”狂ったお茶会”での場面です。このお茶会での意味のないナンセンスな会話自体がイギリスのティータイムでの会話を皮肉っているのはよくわかりますね。ちなみに出席メンバーは、The Mad Hatter(いかれ帽子屋)、March Hare(三月うさぎ)、Dormouse(眠りネズミ)などです。March Hareというのは「三月のウサギのように気が狂っている」(Mad as a March hare)という英語の成句からできたキャラクターで3月が野ウサギの繁殖期だからという説もあるようです。Hareというのは野うさぎと訳されますが、物語の最初から登場する時計を見ながら忙しそうに駆け回る白うさぎ”White Rabbit”のrabbitと区別されています。rabbitはまさに穴の中に入っていくウサギなのですが、hareとrabbitも英語圏ならではの文化風土から生まれた使い分けがあるようです。ご興味ある方はぜひ調べてみてください。

さて、この破茶滅茶なお茶会での一場面での会話です。(Alice in Wonderland 1951.USより)

Dormouse:Twinkle, twinkle little bat,
How I wonder what you’re at!
Up above the world you fly,
Like a tea-tray in the sky.
Alice:Oh, that was lovely.

星ではなくこうもりが空から落ちてくる内容に書き換えられていますがここでもちゃんとbatとat、flyとskyで韻が踏まれていますね。全くナンセンスな内容にも関わらずアリスがthat was lovelyと褒めているあたりイギリス人らしさがよく出ています。イギリス人はlovelyという言葉が大好きなようです。

このように替え歌で使われることが多いきらきら星ですが、最後にもう一つご紹介しておきます。

『永遠に美しく』(Death Becomes Her)というブラック・コメディ、1992年のアメリカ映画での一場面。年老いた往年の人気女優マデリーンが鏡に向かって化粧をしているときのセリフです。

Madeline:Wrinkled, wrinkled, little star, hope they never see the scars.
Maid:Your guests are here. Miss Ashton.

ここではtwinkleがwrinkleに替えられstarとscarで韻も踏んでいます。マデリーンの美と若さへの執念がユーモラスに替え歌で表現されていますね。

マザーグースの存在を知らずにこのセリフだけ聞いてると唐突にlittle starが出てきて何のことかなと思ってしまいます。この例からも何気ない会話の中でマザーグースがしっかり息づいていることがわかりますね。

では、きらきら星の編、この辺でお開きにしたいと思います。

参考文献:映画の中のマザーグース( 鳥山淳子、スクリーンプレイ出版)、映画で学ぶ英語の世界(鳥山淳子、くろしお出版)、マザーグース・コレクション100(藤野紀男・夏目康子、ミネルヴァ書房)、大人になってから読むマザー・グース(加藤恭子、ジョーン・ハーヴェイ、PHP研究所)、マザーグースをたずねて(鷲津名都江、筑摩書房)、英語で読もうMother Goose(平野敬一、筑摩書房)、ファンタジーの大学(ディーエイチシー)、グリム童話より怖いマザーグースって残酷(藤野紀男、二見書房)

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