「世界のニュースから」第30号 ~会話文化の違い Silence vs Small talk~

「世界のニュースから」第30号 ~会話文化の違い Silence vs Small talk~

~このコーナーでは言葉や文化の違いをテーマとして世界で起こっている興味深いニュース 記事をピックアップしていきます。~

会話文化の違い Silence vs Small talk

先月の会員限定記事でスウェーデンの「ほどほど文化」Lagomについて触れました。そこからスウェーデンだけでなく北欧全般に見られる独特なコミュニケーション ー 多くを語ることを好まず、順番に話をし、沈黙や”間”を厭わない ー とする会話文化があることを知りました。日本人の感覚とも共通する部分があるように思いますが、その背景には北欧ならではの物事の捉え方、考え方があるようです。
そこで今回はこの欧米文化圏にあっては独特な北欧流コミュニケーションについて述べられた一つの記事からグローバルな視点でこのような会話文化の違いを深掘りしていきたいと思います。

まず、スウェーデンのLagomについて初めてお聞きになる言葉でしたら会員限定記事でもご紹介した下記の記事を参考になさってみてください。

Lagom: the Swedish Concept You Need to Hear About
https://medium.com/mind-cafe/lagom-the-swedish-concept-you-need-to-hear-about-fc095908e48a

では早速、北欧流コミュニケーションについての記事を下記にご紹介します。記事ではデンマークで過ごした英語ネィティブのアメリカ人の視点でデンマーク人に限らず北欧の人々に共通する会話のあり方から生じる大きなギャップについて述べられています。北欧では英語を第二言語のようにナチュラルに話す人が多く、その点では私たち日本人と大きく言語環境が異なりますが、日本人からすると英語を話すハンディキャップがないのであれば欧米人同士、そんなにギャップを感じることなどあるのかしらなどと思ってしまいます。この感覚はアメリカ人にも少なからずあるのか、北欧の人々がナチュラルに英語を話すことでついついノンネィティブであることを忘れて自分たちと同じ言語文化が通用すると思ってしまい、そのため思わぬギャップがあるとその戸惑いも尚更大きくなるようです。
記事ではそうしたコミュニケーションギャップがなぜ起こるのか、またどう乗り越えればいいか、”awkward silence”を徹底的に避けようとするアメリカ人が会話というものをどのように捉えているかがよく分かる内容となっています。

Nordic Conversations Are Different
https://virtualwayfarer.com/nordic-conversations-are-different/

またこの記事の読みごたえは非常にたくさんのコメントが寄せられていることにあります。欧米言語圏の人々、特に北欧と関わりのある人々からのコメントが多いのですが、そうした国の様々な言語背景を持つ人々が言語やコミュニケーションについて自身の経験や考えを述べており大変興味深いものとなっています。北欧の人々の会話に対する独特の”間”や”順番に話す”という特性をアメリカ人はどう捉えているのか、また逆にアメリカ人の次から次へと絶え間なくトピックを変える ー ”会話を重ねていく(layer)” ー そういう会話に対する北欧出身の人々の反応など、具体的な場面が想像できとても面白く興味深く読むことができます。

そして余談ではありますが、アメリカ人の話すペースの速さは英語を流暢に話す北欧の人にとってもついていけない、あるいは辟易している人も多いのだと知って何だかちょっとホッとした筆者です。フロリダのアメリカ人だらけの中で1ヶ月ほどですが過ごした経験がありますが、毎晩誘ってくれるカジュアルなディナーの席で皆が一斉に話し始めた時の取り残され感とそれから過ごさなくてはならない試練の時の長さがいかばかりだったか、御察しいただけるかと思います(笑

ここでいくつかコメントをご紹介していきます。
まずは相手の話に対してどのように相槌を打ったり反応すべきか、英語で”feedback”という言葉が使われていますが、これに対してフィンランド人の年配の方からの意見がこちらです。一部抜粋です。
“As a finn (of older generation), I would like to express my agreement with Larisa. Feedback needs to be topic related and relevant, and it should happen on your turn. It is only respectful to listen to the speaker and to interrupt is a sign of disrespect. You will get your turn when the other has said his piece.”
相手の話を遮るのではなく相手の話を聞き終わって自分の話す番が来たときに話すべきと、まさに北欧的コミュニケーションの王道を語っていますね(笑

また、次のコメントではアメリカ人の会話をnon-nativeの英語話者がどのように捉えているのかがよく分かります。やはりアメリカ人の英語は早いし畳み掛けるように別の人が会話に加わったりで、一言で言うと「落ち着かない!」ようです。一部抜粋です。
“Fascinating write up. I do agree that American English feels rushed, with it’s frequent interruptions and fast, almost nervous pacing. I always enjoy talking to non native English speakers because conversations tend to feel more focused and more relaxed. It’s very interesting to read some of the “why” behind that.”

一方、そんなアメリカ人ばかりではないというコメントから一部抜粋したのがこちら。
“I am a Norwegian. I have the same problem talking to texans in english.. they are so freaking slow and never get to the point. I could fill a tub with water before they get to the point.”
あくまでもこの方の個人的な経験値に基づくものですが、テキサスの人がお風呂にお湯が溜まるくらい話が遅いというのはかなりオーバーな表現で笑ってしまいますね。

また次のコメントは全文を紹介しますが、あるオランダ人が日本で経験したコミュニケーションギャップ、特に”awakward silence”について述べられています。”conversational balance”をうまく取ることが文化の異なる人々と長く付き合っていくには必要と最後に述べられています。
“Thanks Alex, for the very intelligent post on this subject. Conversations between people from different cultures are such a fascinating study subject. Talking to each other might seem simple but it especially shows its complexity when people get in contact with speakers from different countries/cultures. It is easy to feel awkward, confused or irritated, while there is actually nothing wrong.
I am from the Netherlands, and there we also make an effort to avoid awkward silences. I did not travel to Scandinavian countries yet, but I traveled and lived in Asia for long periods. In the beginning, the conversational part was a real challenge. When I stayed in Japan, people often said nothing to me for long periods. I quickly felt uneasy but for them it was normal to be silent. What was happening in their mind was often about to stay there. I sometimes irritated them by asking if there was something wrong. It can be a really interesting challenge to find a conversational balance when your are in close contact with foreign people for a long time.”

また、アメリカ人のコミュニケーションが傲慢だと言うコメントに対して次のように反論するコメントも見られました。一部抜粋です。
“Of course you are entitled to your opinions like everyone else, however I find it offensive to attribute the American style of conversation as something so arrogant as talking more to “gift “our language to others. I am an American woman, married to a Finn and living in rural Finland. I agree that Nordic and U.S. conversational styles are vastly different and can lead to awkward moments and misunderstandings for whatever reasons, but I am not ashamed of my American style of communication, however negatively it may be viewed. In fact, after several years of “the silent treatment”, I long for a good ol’ American free-for-all style of conversation.”

たくさんの興味深いコメントがありキリがないのですが、最後にデンマーク出身で長くアメリカに住んでいる男性のコメントをご紹介します。一部抜粋です。
“As a Dane who has lived in the US for 30-odd years, I recognize much of what you say here, except “in reverse.” Even after 30 years here, I still find that I wait for “natural gaps” in conversations before feeling inclined to speak, and many of them never happen… making me realize that I have said nothing, and the “good idea” I had has been left 15 minutes and three topic changes behind. Because somewhere inside my remaining cultural core “it’s rude” to just “insert myself” when there hasn’t been a natural conclusion to someone’s words.
Similarly, I often feel “talked over” when someone starts talking while I am still going. It took me better than a decade to understand that this was not rudeness, but cultural conversational conventions. To this day, I am perfectly comfortable with silence while in the company of others, and feel blessed that my American wife is also OK with silence.”

このように様々なバックグラウンドを持つ人々がそれぞれの経験を基に意見や考えを述べているのは大変読んでいて興味深いものがありますね。中には言語を教える立場の方からの言語学的視点からの考察も見られました。そしてコメントの多くに記事筆者自身が返答していますのでそのやり取りを読むのも大変勉強になります。外国語の習得や異文化コミュニケーションに興味がある方にとってはまさに生きた教材とも言えるのではないでしょうか。

会話の”間”を好む北欧人の中でも国によってそれぞれまた少しずつ会話に対する考え方が違うという内容も散見されましたが、北欧の人が息を吸いながら言葉を発する?(speaking while inhaling)という話題もあり、一体どういうことなんだろうと、とても興味深く思いました。
ここではご紹介できないほどたくさんのコメントが出ていますのでご興味ありましたらぜひ読んでみてください。

では最後に会話に起こる”間 – silence – “を極端に嫌うアメリカ人ならではの会話術として有名な”small talk”について異なる側面で書かれた2つのエッセイをご紹介します。
まずはアメリカ人だけど、”small talk”に苦しめられている?というまさにタイトルが物語る内容のエッセイが下記です。

Why small talk is so excruciating
https://www.vox.com/2015/7/7/8903123/small-talk

筆者には英語の文章が結構難しくて読解に苦労しましたが、アメリカ人のコミュニケーションに対する考え方が分かるいい例ではないかと思いご紹介します。

次にこちらはもっと楽に読んでいただけると思いますが、ドイツ在住アメリカ人のドイツ人とのコミュニケーションに対するやや辛口エッセイです。記事に対してドイツ人からの返信コメントがありましたが、堅物でシャイ、生真面目なドイツ人気質が伺え、日本人とも共通するメンタリティを感じましたがいかがでしょうか。

American small talk vs German no talk
https://www.german-way.com/american-small-talk-vs-german-no-talk/

さて、コミュニケーションの色々を見てきましたが、日本人同士でも社交的とは言えない筆者にとっては少々身につまされる思いがしましたが、皆さんはSilence派?それともSmall talk派?どちらでいらっしゃいますか?

では今回のお話はこれで終わりに致します。

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